COLUMN — コラム

パン屋・お菓子屋のホームページは、「今日あるか」がすべてだと思う

トレーに並んだクロワッサンや菓子パン

「パンを買いに行こう」と思ってから、実際にお店に着くまでのあいだに、人は何度か行くのをやめています。しかもそのほとんどは、パンの味とは関係のないところで起きています。今日は開いているだろうか。もう売り切れていないだろうか。この2つが分からないだけで、「また今度でいいか」になってしまう。

パン屋さん・お菓子屋さんのホームページは、この「また今度」をどれだけ減らせるかで、ほとんど決まると思っています。以下は、お店の方とお話ししていて何度も出てくることと、さいたま市内のお店のページを見てきて、買う側として引っかかったところです。

「今日、開いていますか」に答えているサイトが、意外と少ない

営業時間の欄に「不定休」とだけ書かれているお店が、かなりあります。書いた側からすればいちばん正確な表記です。決まった曜日に休むわけではないのだから、そう書くしかない。

ただ、読む側にとって「不定休」は、「行ってみないと分からない」とほぼ同じ意味になります。とくに、車を出して10分15分かけて向かう距離のお店だと、この一語で足が止まります。

面白いのは、たいていのお店は、その日の営業を店頭の黒板や、SNSにはちゃんと書いているということです。書いていないのではなく、ホームページにだけ載っていない。だから必要なのは、毎日ホームページを書き換えることではなく、どこを見れば今日のことが分かるのかを、1行足しておくことです。

よくある書き方

営業時間 10:00〜18:00
定休日 不定休

正確ではあるけれど、読んだ人は「今日どうなのか」が分からないままになります。

こう書くと伝わります

営業時間 10:00〜18:00
(パンがなくなり次第、早じまいすることがあります)
お休み 水曜日と、月に1〜2回
お休みの日は前日までにInstagramでお知らせしています

「不定休」を消す必要はありません。どこを見れば分かるかを足すだけです。

焼き上がりの時間は、来る時間を決めてしまう

店先に黒板の看板を出しているパン屋の外観
その日のことは、たいてい店頭の黒板にはきちんと書いてあります。ホームページにだけ載っていない、ということがよくあります。

「食パンは11時と15時に焼き上がります」。この一行が書いてあるかどうかで、来る人の行動は変わります。焼きたてを狙って時間を合わせてくれる方は、思っているよりずっと多いです。

逆に、書いていないと何が起きるか。夕方に来て、目当てのものがなくて、そのまま帰る。お店からすると「夕方は売れない」に見えますが、来た側の記憶には「あの店は行っても無い」が残ります。この差はあとから効いてきます。

全種類の時間を書く必要はありません。看板になっている2〜3種類だけで十分です。「食パンは11時ごろ/クロワッサンは朝いちばんと14時ごろ」。それだけで、来る時間が動きます。

イートインがあるかどうかは、思っているより見られています

持ち帰り専門なのか、その場で食べられるのか。席がいくつあるのか。これが分からないまま向かうのは、来る側にとって小さなストレスです。とくに、小さいお子さん連れの方と、車で来る方は事前に知りたがります。

書いておくと親切なのは、このあたりです。

  • 席数(「4席だけあります」でも立派な情報です)
  • 飲みものがあるかどうか
  • ベビーカーのまま入れるか、抱っこのほうが安心か
  • 駐車場が何台分あるか、近くのコインパーキングはどこか

駐車場は、書いていないお店がとても多いところです。「2台あります。満車のときは向かいの◯◯パーキングをお使いください」まで書いてあると、初めての方の不安がひとつ減ります。

予約・取り置き・アレルギー表示は、お店の電話を減らします

これは、来る人のためであると同時に、お店の手間を減らす話でもあります。

取り置きができるのかできないのか、何時までなら受けられるのか。まとめて注文したいときは何日前に言えばいいのか。書いていなければ、その全部が電話でかかってきます。しかもパン屋さんは、いちばん手が離せない時間に鳴ります。

書いていないと

「取り置きできますか」
「10個お願いしたいんですが、今日で間に合いますか」
「卵は入っていますか」

同じ質問が、作業中の時間に何度もかかってきます。

1ページ書いておくと

取り置きはお電話で承ります(当日15時まで)。
10個以上のご注文は、前日のお昼までにお願いします。
小麦・卵・乳を使ったパンには、店頭の値札に印をつけています。くわしくはお尋ねください。

全部に答える必要はありません。「店頭でお尋ねください」と書いてあるだけでも、来る前の不安は消えます。

アレルギーについては、はっきり書けないことも多いと思います。同じ厨房で小麦を扱っている以上、「完全に入っていません」とは言えない。それならそう書けばいいと思っています。書けないことを書かないのと、書けない理由を書いておくのとでは、受け取られ方がまったく違います。

こだわりほど、書かれていないことが多い

木のまな板の上に置かれた、切り分けられた丸いパン
作っている本人にとって当たり前のことほど、書かないままになりがちです。

国産の小麦を使っている。自家製の酵母で時間をかけて発酵させている。バターの銘柄を決めている。添加物を入れていない。こういうことを持っているお店ほど、ホームページには書かれていません。

理由ははっきりしていて、作っている本人にとっては当たり前すぎるからです。毎日やっていることを、わざわざ言うことだと思えない。お話を伺っていると、こちらが「それは書いたほうがいいです」とお伝えして、はじめて「そうですか」と言われることがよくあります。

書くときのコツは、材料の名前で止めないことです。

  • 「北海道産の小麦を使っています」→ 事実だけで終わっています
  • 「北海道産の小麦を使っています。香りが穏やかで、毎日食べても飽きないからです」→ 選んだ理由まで書くと、その人の言葉になります

うまい言い回しにしなくて大丈夫です。むしろ、きれいな文章にするほど、どこかで見た言葉に寄っていきます。お店の方が話したとおりに書いてあるページのほうが、読んでいて信用できます。

毎日更新しなくても古びない作りにしておく

ここがいちばん大事かもしれません。パン屋さん・お菓子屋さんは朝が早く、仕込みがあって、店に立って、片づけがあります。「毎日ホームページを更新しましょう」という作り方は、まず続きません。続かないと、止まった日付だけが残ります。

止まったお知らせが載っているページは、読む人に「今もやっているのだろうか」と思わせます。何も書いていないより悪い、ということが起きます。

なので、最初から3つに分けて作っておくのがいいと思っています。

  • 変わらないこと(考え方、作り方、材料、アレルギーの扱い、行き方、駐車場)→ ホームページにしっかり書く。何年でも効きます
  • 毎日変わること(今日のパン、臨時のお休み)→ SNSに任せて、ホームページからその日の投稿が見えるようにしておく
  • ときどき変わること(季節のパン、営業時間の変更)→ お店の方が自分で直せる場所を、1か所だけ作っておく

直せる場所を「1か所だけ」にしておくのがコツです。あちこち直せるようにすると、どこを直せばいいのか分からなくなって、結局どこも直さなくなります。

今日そのまま確かめられるチェックリスト

ご自分のお店のページを開いて、上から見ていってみてください。だいたい5分で終わります。

パン屋・お菓子屋のホームページ 確認9項目
  • 今日が営業日かどうかが、そのページだけで分かるか
  • 「不定休」の下に、どこを見れば分かるかが書いてあるか
  • 売り切れじまいがあることが書いてあるか
  • 看板商品の焼き上がり時間が、2〜3種類でも書いてあるか
  • イートインの有無と、席数が書いてあるか
  • 駐車場の台数(または近くの停め場所)が書いてあるか
  • 取り置き・まとめ買いの受け方が書いてあるか
  • アレルギーについて、書ける範囲のことが書いてあるか
  • いちばん新しいお知らせの日付が、半年以上前になっていないか

全部そろっている必要はありません。ひとつでも埋まれば、その分だけ「また今度」が減ります。逆に、写真を撮り直したり、デザインをきれいにしたりするのは、この9つのあとで十分間に合います。

パン屋さん・お菓子屋さんとお話ししていると、話はたいてい「売り切れをどう伝えるか」から始まります。ここに書いたのは、その場で何度も出てくることと、買いに行く側として事前に知りたかったことです。

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